2025.04.17

ビジネスアナリストとビジネスアーキテクト

ビジネスアナリストとビジネスアーキテクト:共通点と違いを明確に理解する

 ビジネスアナリストとビジネスアーキテクトは、どちらも組織の成功に貢献する重要な役割ですが、混同されやすいのも事実です。両者の役割を明確に理解するため、共通点と違いを対比しながら、具体的な例を交えて私見を解説します。

 ※ これら定義的なものは人により異なるのであくまで1個人の見解です。

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1. 共通点:組織の目標達成への貢献

ビジネスアナリストとビジネスアーキテクトは、以下の点で共通の目標を持っています。

  • 組織の目標達成:
     どちらの役割も、組織の目標達成に貢献することを最終的な目的としています。ビジネスアナリストは個々のプロジェクトを通じて、ビジネスアーキテクトは組織全体の構造改革を通じて、目標達成を支援します。
  • 問題解決:
    ビジネス上の問題や課題を特定し、解決策を提案するという点も共通しています。ビジネスアナリストは、特定のプロジェクトにおける課題解決に焦点を当て、ビジネスアーキテクトは、より広範な組織レベルでの問題解決に取り組みます。
  • 分析スキル:
    データ分析、プロセス分析、要件分析など、さまざまな分析スキルが必要とされる点も共通しています。
  • コミュニケーションスキル:
    双方とも、関係者との円滑なコミュニケーションが不可欠です。ビジネスアナリストは、プロジェクトチームやユーザーとのコミュニケーションを重視し、ビジネスアーキテクトは、経営層や各部門の責任者など、より広範な関係者とのコミュニケーションを行います。

2. 違い:視点、スコープ、成果物

ビジネスアナリストとビジネスアーキテクトの主な違いは、以下の点に集約されます。

項目ビジネスアナリストビジネスアーキテクト
視点戦術的・個別的:特定のプロジェクトやイニシアチブに焦点を当て、具体的な課題解決や要件定義を行います。戦略的・全体的:組織全体の構造、プロセス、ケイパビリティを俯瞰し、長期的な視点で最適化を図ります。
スコーププロジェクトレベル:特定のプロジェクトの要件定義、分析、ソリューションの評価、実装サポートなどが主な活動範囲です。エンタープライズレベル:組織全体のビジネスモデル、オペレーティングモデル、ケイパビリティの設計、変革ロードマップの策定などが主な活動範囲です。
主な成果物ビジネス要件定義書、機能仕様書、ユースケース、ユーザーストーリー、受け入れ基準など、プロジェクトの実行に必要な具体的なドキュメントビジネスケイパビリティモデル、バリューストリームマップ、ビジネスアーキテクチャロードマップ、ギャップ分析レポートなど、組織の構造と変革の方向性を示すドキュメント
関わるステークホルダープロジェクトマネージャー、開発チーム、ユーザー、SME(主題専門家)など、プロジェクトに関わる関係者経営層、部門責任者、ITアーキテクト、エンタープライズアーキテクトなど、組織全体の戦略に関わる関係者

3. 具体的な例で理解する

以下に、ビジネスアナリストとビジネスアーキテクトの役割の違いを、具体的な例で示します。

  • 例1:新規顧客管理システム導入
    • ビジネスアナリスト:
       新規顧客管理システム導入プロジェクトにおいて、ユーザー部門からの要件をヒアリングし、機能要件定義書を作成します。また、システムのテスト計画を策定し、ユーザー受け入れテストを支援します。
    • ビジネスアーキテクト:
       組織全体の顧客管理プロセスを分析し、新しいシステムが既存のシステムやプロセスとどのように連携すべきかを定義します。また、顧客管理ケイパビリティを向上させるための長期的なロードマップを策定します。
  • 例2:新規事業立ち上げ
    • ビジネスアナリスト:
       新規事業の市場調査、競合分析、顧客ニーズの分析を行い、事業計画の策定を支援します。また、新規事業に必要なシステムの要件定義を行います。
    • ビジネスアーキテクト:
        新規事業が組織全体の戦略にどのように適合するかを評価し、必要な組織構造、プロセス、ケイパビリティを定義します。また、新規事業の成長に合わせて組織をどのように変革していくべきかを示すロードマップを策定します。

4. 協働による相乗効果

 ビジネスアナリストとビジネスアーキテクトは、それぞれの専門性を活かして協働することで、より大きな価値を生み出すことができます。

  • ビジネスアナリストは、個々のプロジェクトの詳細な情報をビジネスアーキテクトに提供することで、ビジネスアーキテクトが組織全体の状況をより正確に把握するのを支援します。
  • ビジネスアーキテクトは、組織全体の戦略的な方向性をビジネスアナリストに伝えることで、ビジネスアナリストが個々のプロジェクトを組織全体の目標と整合させるのを支援します。

5. まとめ

ビジネスアナリストとビジネスアーキテクトは、異なる視点とスコープを持ちながらも、組織の目標達成という共通の目的を持っています。両者の役割を明確に理解し、効果的に協働させることで、組織はより大きな成果を上げることができるでしょう。

組織によっては、ビジネスアナリストがビジネスアーキテクトの役割の一部を担ったり、その逆のケースもあります。重要なのは、それぞれの役割の特性を理解し、組織の状況に合わせて柔軟に役割分担を行うことです。

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